2012年4月3日火曜日

最優秀作品 「カタツムリ海へ行く」 上田朝子(8才)

八戸童話会 創作童話集 おとぎの森No.1 より


むかしむかし、と言っても、北海道にまりもがやっと住みつくようになった頃のお話です。そのころ、カタツムリは世界中に三十ぴきぐらいしか住んでいませんでした。

ちょうど、ふん火がさかんな時代で、カタツムリの住んでいた南の島の山も火をふき上げていました。カタツムリは、自分たちの体ぐらいの長さを1スネールと呼んでいました。

ある日、マグマが七十スネールの近くにながれてきて、多くのカタツムリはやけ死んでしまいました。のこったカタツムリは、たったの二ひき。そのうち、一ぴきのカタツムリはタイムマシーンとワープロを使えたので(カタツムリだからといって、ばかにしてはいけないのです。)、字を使える時代の人間に手紙をだしました。

[ふん火がおきたので、船でにげようと思います。船を作るざい料をおくってください。おねがいします。

カタツムリより。

ついしん・・・・・とってもいそいでいます。」

ところが、使おうと思ったポンコツのタイムマシーンは、一枚の紙の重さでさえ重量オーバーだと言うサインをだしました。カタツムリのツムリくんは、ぜつぼうしてタイムマシンをバン!とたたきました。このタイムマシンはポンコツなので、へんなところをたたかれて、赤と青と黄色の変なけむりをだしてこわれてしまいました。

その時、カタツムリにとって運がいいことに南の島の上空をカモメのゆうびんやさんが通りかかりました。手紙は、カモメさんにお願いして、カモメの秘密のルートで字の読める人間のいる時代に運ばれました。

さて、ここは、字の読める人間がたくさんいる時代の旭ケ丘小学校の前です。

カモメさんは、旭ケ丘小学校のげんかんの前に手紙をおこうとしました。

でも、風が強くて、げたばこの中にピラッと入ってしまいました。それは二年三組の上田朝子と書いてあるところでした。

ちょうどその時、じゅぎょうが終わって、みんなが出てきました。朝子さんがクツをはこうとしたら、ズックの中が、もぞもぞがさがさするではありませんか。クツをひっくりかえすと、小さな小さな紙がポトン。

「あれっ、これ何だろう?」

見てみると、手紙みたいです。とっても小さな字だけれど、ちゃんと読めます。

「えっ、ふん火っ!」

朝子さんの心ぞうは、ドキンとしました。カタツムリさんがあぶない!

走って家に帰った朝子さんは、カタツムリさんのために、ざい料ではなく船を作ってあげることにしました。だって、カタツムリが作るより、人間が作った方がずっと早くできるでしょう?

ごみばこをチラッと見ると、カマンベールのはこやえい語のカセットのはこがすててありました。

「これをリサククルして使おうっと。」

かぎりある資源を大切に、と心の中でつぶやきながら、朝子さんは船を作っていきました。まどには切れはしのレースでカーテンをつけました。カタツムリはあつさに弱いだろうな、と思ったからです。船の下には、真水をためておくタンクをつけました。おふろやシャワーやエサのそうこもつけました。海ってしおからいし、エサだってないでしょうからね。

ぜんぶできあがってからこんぽう用の、プチプチなるビニールでだいじにつつみました。つつむと中、つぶしてプチプチやりたくてたまりませんでしたが、がまんしました。

小づつみには、、前の手紙のカタツムリの絵を書いておきました。これは、あて名のつもりです。赤い太い字で[大とっきゅう]と書いて、カモメのゆうびんやさんにたのむため、窓のところへおいておきました。

つぎの日の朝、まどのところを見ると、小づつみがありませんでした。そのかわり[カモメのたっきゅうびんりょうしゅう書・サイン・カモメ]と書いてあるはっぱがおいてありました。

朝子さんが用意した小づつみは、あんまりひょうばんのよくないカモメがもっていくことになりました。ねむりながらとんだり、道草をしたり、エサを食べてばかりいるひょうばんのよくないカモメは、秘密のルートのと中で、あくびをしながら、ジンベイザメに、

「この小づつみを南のカタツムリのところへとどけておくれ。おれいにあしたの天気をおしえてあげるよ。あしたは晴れさ。」

と言いました。天気のわるいのがきらいなジンベイザメは、

「そうか、晴れか。晴れだったらいいぞ。」

とよろこんで言いました。ジンベイザメはまじめなサメだったので、あん心してものをたのめます。むずかしいゆうびんやさんのしけんにうかった本もののゆうびんやさんのカモメは、たのむあい手もちゃんとえらぶのです。ジンベイザメは小づつみを頭にのせて百メートルを三秒というものすごい速さでおよいでいきました。

そのころ、カタツムリは、南の島の海がんで気ぜつしていました。よう岩の先っちょが、十スネールまでせまっていました。まわりはジリジリしはじめています。

その時、カタツムリの頭に、ピチャッと水がかかりました。

(あれッ、つめたい。何だろう。)

うっすらと目をあけると、目の前に船がありました。二ひきが船にとびのると、島はゴゴゴゴゴ・・・・・という音をたてて、海の中にきえてしまいました。

船は、すぐになみにのって、北の方へながれていきました。

ツムリくんが元気がないので、カタ子ちゃんが、

「ツムリくん、元気がないね。どうしたの?」と聞きました。

「うん・・・・・・。島にいた時、海水がかかったから、とけそうで・・・・・・。」

「えっ、それは大へん!」

カタ子ちゃんは、ま水をわかして、おふろにツムリくんをいれてあげました。おふろに入ったツムリくんは、朝子さんが用いしたタオルをからにのせて、ニコニコしながら、

「いーいま水だなー。いーいま水だなー。」と歌いました。

夜になりました。くらくてさびしい海の上。聞こえるのは、なみの音だけ。

「ちょっと、そこのだんなさんとおくさん。どこにいくんかないな?」

とつぜん、まっくらな中から太い声がしました。ツムリくんは、

「そ、そういう、あ、あなたはどなたですか?」

思わずふるえる声になってしまいました。

「わしかい、わしは、ちょうちんあんっこうだ。」

ツムリくんの話しを聞いたちょうちんあんこうは、かわいそうに思って、一ばん中、あかりをつけてくれました。

つぎの日は、へんな鳥に会いました。マストの上にとまって、

「へい!へい!かの女。そこで何をしているんだい?」

と、カタ子ちゃんにむかってさけんでいるのです。見ると、頭のかみの毛がさか立っていて、まるで鳥のパックパンクファッションみたいでした。これを見たカタ子ちゃんは、(ふりょうみたいだな。)と思いましたが、口で言うとしつれいなので、だまっていました。

「あの・・・・・ぼくたち、カモメのひみつルートをさがしているんですが・・・・・・。あなたも鳥だから、もしかして知っていませんか。?」

ふりょう鳥は、口ぶえをヒューと鳴らしながら、

「カモメのひみつルート!そりゃ、しらんことはないがな。あんなぶっそうなところに、こんな小さなカタツムリが行くなんて。君たち、見かけによらず、ゆう気があるんだな。見なおしたぜ。」

と言いました。そして、しんろを北北西にとること、七日七ばんすすむこと。ひみつのルートの近くに行くと、すごいはやさですいこまれてしまうから、ちゅういがひつようなこと・・・・・を教えてくれました。「まっ暗になったら、コショウをわすれずに、力いっぱいおくになげこむんだぞ。これをわすれないようにな。」

言い終わると、ふりょう鳥は、カタ子ちゃんにウィンクしてとんでいってしまいました。

七日七ばんたって、カタ子ちゃんとツムリくんは、すっかり日焼けして黒くなりました。

「もう、あしたのごはんのはっぱがなくなっちゃった。どうしよう。」

カタ子ちゃんがつぶやいた時、ものすごいいきおいで船がすいこまれていきました。あっと言う間もなく、あたりは真っ暗になってしまいました。

「コショウ!コショウをなげなくちゃ!」

カタ子ちゃんがさけぶと、ツムリくんが力いっぱいコショウのビンをおくになげました。小さなカタツムリのどこに、こんな力があったのでしょう。

「はっはっはっ、はっくしょん!」

ピユーン!とカタツムリをのせた船は、ま青な中をどこまでもどこまでもとんでいきました。ずっと下に、大きなクジラみたいなものがチラッと見えました。

朝子さんが学校から帰ると中、晴れているのに雨がふってきました。

「あっ、キツネのよめいり。」

その時、二ひきのカタツムリが、朝子さんのめがねの上におちてきました。

(カタツムリのよめいりかな?)

と思って、おかしくなった朝子さんは、そっとカタツムリをアジサイのはっぱの上にのせてあげたのでした。