八戸童話会 創作童話集 >おとぎの森No.4 より
海が大好きなケイは、いつも海に来ていました。太陽の光によって輝く海が大好きな男の子です。
「海の底に行ってみたいなぁ」
ふと、ケイはこんな言葉を呟きました。水の上でもこんなにきれいなのだから、中はもっときれいなのだろうと思っていました。その時です。水の上で何かが跳ねました。何だろうと思って、目をよくこすって海を見つめました。すると、一匹のイルカがこちらに近づいてくるのが見えました。イルカはケイの前に止まりました。
「君がケイくん?」
ケイはびっくりして声が出ません。だって、イルカが喋っているなんて、イルカはそんなケイの顔を見て笑い出しました。
「まぁ驚くのは無理ないか。あぁ、そうそう。ケイ、君に話しがあるんだ。」
「・・・・・話?」
ケイはやっと声をだしました。どうしてイルカが喋っているんだろうと不思議でならなかったのですが、まずイルカの話しを聞こうと思いました。
「うん。そう、いつも海を見ているケイを、僕は眺めていたんだ。それで、さっきの君の言葉を聞いて、海へ連れてってあげたいと思っているのさ。」
イルカはケイにそう話しかけました。ケイは信じられませんでした。だって、イルカに乗せてもらって海に連れてってもらえるなんて。
「本当に?僕を海に連れてってくれるのかい?」
「本当さ。もちろん海の底にもつれてってあげる。何も心配しなくていいよ。」
その言葉を聞いて、ケイは飛び上がって喜びました。こんなにも早く夢がかなうのですから。
「じゃあ、今すぐにでもいいかな。」
ケイは、今すぐ行きたくてウズウズしていました。そんなケイを見て、イルカはまた笑いました。
「もちろんいいさ。さぁ、僕の背中に乗って行こう!」
ケイを乗せたイルカは、波しぶきを上げて海へと泳ぎだしました。波しぶきがキラキラと光ながら落ちていくのを見て、ケイは目を細めました。満足な笑顔を見せています。
「ケイ君、本当にうれしそうだね。うれしいな、君のような少年と海を散歩できて。」
イルカは後ろに乗っているケイにそんな言葉をかけました。
「あぁ、僕もだよイルカ君。あ、そうだイルカ君には名前はないのかい?ずっとイルカ君っていうのもへんだし・・。」
と、イルカに聞きました。
「僕の名前?あれ、言ってなかったっけ。ごめんよ。僕はカッシュ。かっこいい名前だろ?自分で言うのもなんだけど。」
そう言って、照れ笑いをしているカッシュを見て、ケイは大笑いをしました。イルカが冗談言うなんて、おかしくって。
「じゃあ、つぎは海の底へ行こうか。」
そう言うカッシュに、ケイは[うん]とうなずきました。その時、ケイは急に思い出して、カッシュに言いました。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。カッシュは水の中でも呼吸ができるけれど、僕はできないよ。」
そうです。ケイは人間なのですから、水の中では息ができるわけがありません。ケイは悩みました。僕は行けないと・・・・・・・。するとカッシュが、
「なぁんだそんな事。大丈夫、何も心配ないといったよ。」
と、カッシュは言いました。
「えっ、でも・・・・・。」
ケイは、大丈夫を連発しているカッシュを見て、不思議でなりませんでした。
「じゃっ、海の底へ出発!]」
と言って海へ潜って行きました。
ザッパーン
信じられないことがケイに起こりました。息が出来ないものだと思っていたのに、なんと息が出来るのです。どうしてだろうとケイは考えました。するとカッシュが、
「僕が君に魔法をかけたのさ。水にもぬれないし、息もできるっていう魔法をね。」
ケイはびっくりしました。
「カッシュ、君、魔法が使えるの。どうして?」
そう話しかけるケイに、カッシュは笑うだけで何も話してくれません。
「それより、ほら、折角海の底に来たんだよ。見ないと損するよ。ケイ君。」
そう言われて、ケイは意識をカッシュから周りへと移しました。目に飛び込んだ光景は、
たくさんの魚達
色々な珊瑚礁
見たことがない海の生き物。
もうケイは嬉しくってカッシュにいろんな事を聞いています。
結構な長い時間、海の底を散歩していました。ケイとカッシュは珊瑚礁の一つに降りて一休みをしていました。その時です。不意にカッシュが身を凍らせました。
「カッシュ・・・・・・どうかした?何かあった?」
とつぜん身を凍らせてしまったカッシュにケイは、不思議そうに尋ねました。
「ケイ、早くここから逃げないと、あいつが来る!」
カッシュは早口で言うと、ブルブルと震えています。
「あいつ?ねぇカッシュ、あいつって誰だい?」
サメだよという渇すの言葉を聞いて、ケイは恐ろしくなり身がすくみました。でも、今は逃げる事が先決です。
「よし乗ったね。行くよ!」
その時です。すごい水圧が二人にかかりました。
「うあっー、カッーシュ!」
水の来襲で、ケイはカッシュから落ちてしまいました。カッシュは、落ちて行くケイ目指して慌てて泳ぎだしました。
不意にケイの体が止まりました。でも、今度はもっと恐ろしい事になりました。だって、ケイの後ろ襟を鮫が持ち上げているんですから。
「よぉ、イルカのカッシュに人間のケイだな。俺、今、腹減っているんだよ。俺にこのケイくれ。」
ケイは逃げようとバタバタもがくのですが、歯にがっちりはさまれているので、どうしようのできません。「ケイ君を離せ!サメ君。」
そう言ったカッシュの体がまぶしく光はじめました。ケイとサメはびっくりして、動きを止めて見つめました。そして、サメはびっくりして、動きを止めて見つめていました。そして、光の中から現れた少年にびっくりして、ケイを離して逃げ出しました。ガックリとまたケイは落ちていきました。
「たすけてーっ。」
底のぶつかる寸前、カッシュは誰かに手をつかまれました。上を見ると、あの少年でした。
「君・・・・・・・カッシュ?」
ケイは下にゆっくりと降ろされながら少年に言いました。少年はニッコリと笑顔を見せると、隣に座りました。
「そう、僕はカッシュだよ。この姿が本当の僕なんだ。」
「どういうこと?」
「僕は、この海に住む妖精の一人なんだ。でも、仲間はこの海から出て行ってしまい。僕は一人になってしまった。悲しくて、いつも浜の近くまで来て人間の見ていた。いつもいるケイと話をしてみたくなって、神様に頼んでイルカの姿にしてもらったんだ。この姿で出ていっては行けないと言われていたしね。」
と、カッシュはまた人懐っこい笑顔をケイに見せました。
「カッシュ・・・・・これからは一人じゃないよ。僕達、もうともだちだろう。あっ、さっきは助けてくれてありがとう。」
ケイの言葉にカッシュは目に涙をためて、ありがとうとケイに言いました。
「そろそろ海に戻らないといけないんだ。そうだ、これを。ケイ。」
カッシュはそう言うと、ケイに何かさし出しました。貝殻のようです。
「カッシュ、これは?」
ケイは貝殻の意味をカッシュにききました。
「僕達の友情の証。また会うことを願って。」
「カッシュ、うれしいよ。大事にする。絶対にまた会おう!」
そして、二人は堅く堅く握手をしました。絶対にまた会うという約束をして。
カッシュは海に戻っていきました。ケイはいつまでもいつまでも海を見つめ、貝殻を大事に胸におしあてながら。
あなたも、海を見つめてみませんか。もしかしたら、カッシュがあなたを見つけて、寄ってくるかもしれませんよ